[堀川町]「串焼 またたび」。一人、炭火の香りで出張の夜を閉じる。

一人飲み

昨夜は流川で接待だった。
誰かのために飲む酒は、もう十分だ。
今夜は自分のペースで、自分のために飲む。
広島での出張も大詰め。ネオンの喧騒から少し外れた堀川町の路地を、一人歩く。

入店の判断:結界のような短い階段

雑居ビルや立ち飲み屋が並ぶ通りに、控えめな灯りを見つけた。
入り口には1、2段の短い階段がある。バリアフリーとは無縁のその段差が、どこか外の世界と切り離す結界のように見えた。
ガラス戸越しに見えた店内は、木目調のL字型カウンター。
端の席に、一人でグラスを傾けている男がいた。誰とも話さず、黙って酒を飲んでいる。
それで十分だった。一人なら迷わずカウンターへ滑り込む。
重い扉を開けると、BGMより先に炭火の爆ぜる音が耳に届いた。客の話し声は、低く、遠い。
この店は大丈夫だ。

実食:炭火の香りと、寡黙な職人技

まずは瓶ビールを頼む。合わせるのは「おまかせ串盛り」だ。
目の前の焼き台では、職人が黙々と串を返している。
やがて目の前に置かれた「もも」と「砂ズリ」。香りが立っているが、強すぎない。
もも肉は外がパリッと、中は驚くほどジューシーだ。砂ズリの心地よい歯ごたえが、疲れた顎に小気味いい。
続いて出された「赤鶏ぼんじり」。滴る脂が、次の冷たいビールを要求してくる。
派手なパフォーマンスはない。だがこの実直な仕事ぶりが、疲れた夜には正しい。
静かな空間の中で、串と向き合う。身体感覚が、ゆっくりと自分の内側に戻ってくるのを感じた。

締め:夜風と、確かな満足感

1時間半。3,500円。
表に出ると、夜風が少し冷たかった。
会計を済ませ、店を出る。
広島駅の改札まで、徒歩で戻れる距離だ。
新幹線のシートに身を沈めれば、あとは眠るだけだ。
そういう夜が、たまにある。

来週も、ひとりでふらっと入れる店を探しに行きます。

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