21時半。PCを閉じる音が、静まり返ったフロアに響いた。
ホテルのベッドに倒れ込むには、少しだけ熱が冷めていない。
並木通り。観光客の波も引き、夜の空気が降りてきている。
雑居ビルのエレベーターに乗り、5階のボタンを押す。
「吟結 はなもり」。
重い扉の向こうに、静かなカウンターが待っていた。
端の席に座る。先客は、グラスを傾ける男が一人。
余計な干渉はない。ただ、静かな時間がそこにある。
「生ガキ食べ比べ」。
倉橋産と大崎上島産。
殻の上の身が、照明を吸って鈍く光る。
冷たい海の塩気が、疲れた頭を覚ましていく。
酒は、広島の地酒を選ぶ。
メニューには百を超える銘柄が並ぶが、今夜は重たいものがいい。
辛口の液体が、喉の奥を熱く焼いた。
「たいのフキ味噌焼き」。
箸を入れると、白い身から湯気が立ち上る。
味噌の焦げた香りと、蕗の苦味。
大人の味だ。それ以上でも以下でもない。
ただ、今の自分にはこれが丁度いい。
杯が、もう一杯空になる。
六千円を少し超えた。出張の経費では落ちないが、自分のための夜にはこれくらいの重さがちょうどいい。
1時間半。6,800円。
表に出ると、夜風が少し冷たかった。
来週も、ひとりでふらっと入れる店を探しに行きます。
| アクセス | 広島電鉄 八丁堀電停から徒歩7分 |
|---|---|
| 営業時間 | 18:00~翌2:00 |
| 定休日 | 日曜・祝日 |
| 一人予算 | 約6,000円〜7,000円 |