金曜、20時。
派手な看板が並ぶ八丁堀のビル。
その一室に、街の喧騒を忘れさせる静かな空間がある。
今夜は、誰にも邪魔されず、ただ「魚」と対峙したかった。
「寿し きぬがさ」。
扉を開けると、白木のカウンターが真っ直ぐに伸びている。
過剰な装飾はない。清潔感と、微かな酢の香り。
それだけで、ここが「正しい場所」だと分かる。
カウンターの端に座る。
大将の視線は鋭いが、こちらのプライベートを侵食するような無粋さはない。
「お任せで、いくつか」
その一言で、今夜の幕が上がる。
地物の瀬戸内産の魚が、一貫ずつ差し出される。
煮切りが塗られたネタが、照明の下で静かに光る。
シャリの解け具合。ネタの温度。
舌の上で完成される、一瞬の調和。
酒は、広島のキレのある純米。
小イワシの握り。
瀬戸内の宝石を、一番贅沢な形で噛み締める。
余計な会話はいらない。
ただ、職人の手捌きと、魚の生命力を味わうだけ。
1時間半。会計は七千円台。
酒を重ね、料理に耽った代償だ。納得して札を置く。
出張の経費では落ちないが、自分のための夜にはこれくらいの重さがちょうどいい。
ビルの外に出ると、冷たい夜風が火照った顔を撫でる。
質の高い食事は、明日への静かな活力になる。
来週も、ひとりでふらっと入れる店を探しに行きます。
| アクセス | 広電「八丁堀」電停より徒歩2分 |
|---|---|
| 営業時間 | 18:00〜翌3:00(要確認) |
| 定休日 | 不定休(要確認) |
| 一人予算 | 6,000円〜8,000円 |