幟町の、静かな通りからさらに折れた路地。
「小料理 むら」の暖簾が見えたとき、今夜の勝負は決まったようなものだ。
ここは、余計なものを削ぎ落とし、ただ純粋に旬を愉しむための場所。
19時半。仕事の余韻を断ち切るように、引き戸を開ける。
店内は、使い込まれたカウンターが優しく迎えてくれる。
常連の影はあるが、一人客を邪魔するような野暮な真似をする者はいない。
皆、この店の料理が運んでくる季節を、等しく慈しんでいる。
「お刺身を、盛り合わせで」
運ばれてきたのは、瀬戸内の海の恵みそのもの。
一切れごとに、魚の生命力が伝わってくる。
派手な盛り付けはない。だが、その潔さがかえって信頼を生む。
合わせるのは、広島の銘酒。
温度帯によって表情を変える酒が、料理の旨味をさらに引き立てる。
店主との付かず離れずの距離感。
必要なときだけ言葉を交わし、あとは酒と肴に没頭する。これこそが一人飲みの極致だ。
一時間半。七千円台。
身体の奥底から満足感が込み上げてくる。
店を出ると、夜の幟町は一段と静まり返っていた。
来週も, ひとりでふらっと入れる店を探しに行きます。
| アクセス | 八丁堀電停から徒歩6分 |
|---|---|
| 営業時間 | 17:30~22:00 |
| 定休日 | 日曜日・祝日 |
| 一人予算 | ¥6,000〜¥8,000 |