鉄板 翔[十日市・土橋]。三世代の温もりと、鉄板で踊る「チーズポテサラ」

十日市・土橋

19時半。十日市の交差点近く。原爆ドーム前の喧騒を抜けると、街の体温が数度下がったように感じる。ビジネスホテルの硬い枕から逃げ出し、本川沿いを歩く。今夜は、誰かの「家」のような温かさが欲しい。

ビルの1階。暖簾の隙間から、鉄板の爆ぜる音が漏れていた。
「いらっしゃいませ」
三世代が店を切り盛りしているという。その声には、単なる接客を超えた「迎え入れ」の響きがあった。カウンターの端に腰を下ろす。目の前の鉄板からは、確かな熱が伝わってくる。

まずはビール。神泡と謳われるプレモルが、喉の渇きを鋭く癒やす。
一品目は、この店の名物だという「鉄板チーズポテサラ焼き」。
ポテトサラダが鉄板の上で形を整えられ、チーズを纏う。バーナーで炙られると、香ばしい薫りがカウンターを支配した。
箸を入れる。表面のカリッとしたチーズと、中のホクホクしたポテト。この「不意打ち」のような食感の変化が、独りの夜を饒舌にする。

続いて、黒毛和牛のステーキを少量。
店主の鮮やかなコテ捌き。肉の焼ける音が、どんなBGMよりも心地よい。
塩だけで頂く。脂の甘みが、広島の地酒のキレとぶつかり、静かに調和していく。
シンプルだからこそ、素材の良さが独白の邪魔をしない。

「お好み焼きも、焼けますよ」
若い店主が、さりげなく声をかけてくれる。
だが、今夜はこの余韻を大切にしたい。
カウンターで独り、鉄板の熱を浴びながら酒を傾ける。それだけで、十分すぎるほど贅沢な時間だ。

1時間。4,200円。
会計を済ませると、奥から大女将が「お気をつけて」と微笑んだ。
本川を渡る夜風。ポテサラの香ばしさと、家族の温もり。
明日の仕事も、悪くない気がしてきた。

アクセス 広島電鉄本線「本川町駅」から徒歩1分
営業時間 17:30 – 23:00 (L.O. 22:00)
定休日 日曜日
一人予算 ¥4,000~¥4,999


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