18時過ぎ、広島駅。
「広島に来たからには、やはりお好み焼きをヘラでハフハフと突つき、冷えたビールを喉に流し込みたい」
出張を終えた誰もがそう願う。
だが、駅ナカや有名店の前に立ちはだかるのは、観光客や修学旅行生の狂気的な「長蛇の列」だ。
ソースの焦げる良い香りを前に、一人でその列の最後尾に並び、30分、40分と待つ気力は、疲れ果てた出張男には残っていない。
賑やかすぎる店内、お祭り騒ぎの団体客の隣で、居心地悪そうに食べるのもゴメンだ。
並ばない。騒がしくない。
カウンターの隅に静かに滑り込み、職人の鮮やかなコテさばきを眺めながら、お好み焼きを極上の「つまみ」に変える3つの選択肢。
大人のための、お好み焼きの聖域がここにある。
1. 電光石火(広島駅前・駅前ひろば店)
広島駅南口から徒歩3分、フルフォーカスビル6階のお好み物語。
ワンフロアにお好み焼き店がひしめくこの場所は、一見賑やかで一人では入りにくそうに見える。
だが、あえて一人で「電光石火」のカウンターの端に座るのが、大人の賢い選択だ。
名物「電光石火」を注文する。
たっぷりの大葉を内側に閉じ込め、極限までふんわりと丸くドーム状に焼き上げられた、立体的なお好み焼き。
これを目の前の鉄板からヘラで直接切り崩し、冷えたビールで流し込む。
観光客の熱気を感じるビルのなかで、自分のカウンターだけが静かに凪いでいる。その絶妙な時間の流れがたまらない。
2. いっちゃん(ekie 広島駅店)
新幹線まで、あと40分。
行列に並ぶ余裕は微塵もないが、このまま東京に帰りたくない夜。
駅1階、ekieダイニングの「廣島ぶちうま通り」にある「いっちゃん」が、時間のない男を鮮やかに救ってくれる。
ここはミシュランのビブグルマンにも選ばれた名店だが、駅ナカのこの店舗は先にレジで会計を済ませる前払いシステム。これが抜群に早い。
カウンターの端に滑り込み、お好み焼き(そば)にネギを山盛りにトッピング、そして瓶ビールを頼む。
いっちゃんの生地は驚くほど軽く、キャベツ本来の甘みが際立っている。そこにトッピングしたネギの風味とイカ天のコクがビールの最高のアテに変わる。
30分で完結する極上の鉄板メシ。このスピード感こそ、出張男の知恵だ。
3. 鉄板 翔(十日市・土橋)
原爆ドーム前の賑わいを一本抜け、川を渡った本川町。
そこにある「鉄板 翔」は、三世代が切り盛りする温かな空気と、静かで熱いカウンターがある大人の隠れ家だ。
まずビールと、名物「鉄板チーズポテサラ焼き」を頼む。
ポテトサラダが目の前の鉄板で炙られ、チーズと焦げ目の香ばしい匂いが漂う。
外はカリッ、中はホクホク。この不意打ちの旨さを地酒で楽しむ。
ゆっくりと贅沢な時間を堪能していると、若い店主がさりげなく「お好み焼きも焼けますよ」と声をかけてくれる。
お好み焼き専門店の忙しない空気とは対照的な、丁寧で居心地の良い鉄板焼き居酒屋。一人の時間をじっくり愛でたい夜に。
ソースの香りを纏い、日常へ戻る
会計を済ませ、店を出る。
服に微かに染み付いた、ソースと鉄板の香ばしい匂い。
自分が広島にいたことの、確かな証拠。
夜風を深く吸い込み、改札へ、あるいは駅への道を歩き出す。
「今夜は、いいお好み焼きが食べられた」。
その静かな満足感だけを連れて、私は日常への新幹線、あるいはホテルのベッドへと戻っていく。
今の会社という温室を飛び出したとき、自分にどれだけの価値が残っているのか。
そんな帰り道、ベッドの上で、静かに自分の逃げ道を覗いてみる。
👉 JAC Recruitmentで、自分の価値を静かに確かめる