ホテルで一息つき、明日の資料を読み終えた。少しだけ神経が昂っている。こんな夜は、賑やかな居酒屋よりも、静かな熱量を持つ場所がいい。路地を折れ、見つけた小さな行灯に誘われるように、ビルの奥へと足を進めた。
ビルの奥に潜む、静謐な木目の聖域
薬研堀の喧騒を背に、重厚な扉を開ける。そこには、磨き抜かれたカウンターが優しく光を反射する空間が広がっていた。店主と女将が温かな、けれど程よい距離感の会釈で迎えてくれる。15席というこじんまりとした造りだが、隣の席との間隔はゆったりとしていて、一人の時間を侵される心配はない。カウンターの隅に腰を下ろすと、不思議と呼吸が深くなる。
角の立つ刺身と、錫の器に注がれた広島の雫
最初に出された小鉢盛りに、店主の誠実さが透けて見える。そして、お造りの盛り合わせ。包丁の角がぴたりと立った刺身は、口に運ぶたびに瀬戸内の海の記憶を蘇らせる。合わせる酒は、店主のこだわりが詰まった地酒。錫の器に注がれたそれは、ひんやりと、けれど力強く喉を通っていく。広島名物の「がんす」も、ここでは上品な衣を纏い、噛み締めるたびに魚の旨味が溢れ出した。
六千円の重み、明日への緩やかな助走
酒を二杯、料理を数品。気づけば時計の針は一時間半を回っていた。会計は六千円を少し超えた。出張の経費では落ちないが、自分のための夜にはこれくらいの重さがちょうどいい。店を出ると、薬研堀の冷たい風が少しだけ心地よく感じられた。明日の仕事も、悪くない。そう思えるだけの静かな活力を、この隠れ家で分けてもらった気がする。
| アクセス | 胡町駅より徒歩6分 |
|---|---|
| 営業時間 | 17:30 – 22:30(日・祝 22:00まで) |
| 定休日 | 月曜日(祝日の場合は翌火曜)、年末年始 |
| 一人予算 | ¥6,000〜8,000 |
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