20時。ホテルでシャワーを浴び、少しだけ冷えた夜風に当たる。賑やかな本通りを抜け、袋町へ。観光客の喧騒は遠のき、ポツリと灯る看板が目についた。ビルの2階。階段を上がる足音だけが響く。今夜は、この静けさの先にある扉を開けよう。
扉の向こう、日本酒と出汁の香り
重い扉を押す。控えめな照明が、磨き込まれたカウンターを照らしていた。7席だけの特等席。すでに端に座る先客のグラスが、かすかな光を反射している。BGMは会話を邪魔しない程度の低さだ。カウンターの中央を避け、ひとつ空けた席に腰を下ろす。すぐに供されたお通しと、最初の冷酒。新政の輪郭が、長かった今日の疲労を輪切りにしていく。
燻製の煙と、沁み込む大根
メニューに目を落とす。おでんと燻製。飾り気のない文字が並ぶ。「沢庵の燻製(500円)」と、「おでんの大根、牛すじ(各250円)」を頼む。
しばらくして、飴色に染まった大根が小鉢で出された。箸を入れると、抵抗なく崩れる。口に運べば、時間をかけて煮込まれた出汁の深みが、胃の腑へと落ちていく。続く沢庵の燻製は、その香ばしさが日本酒の余韻をさらに伸ばす。派手さはない。ただ、舌の上で確かな質量を持つ料理たちだ。
袋町の夜に沈む
1時間半。酒を2杯と、つまみをいくつか。五千円台。この立地と味なら、賢い選択をしたと言える。
階段を下り、再び袋町の路地に出る。風は先ほどより少しだけ冷たかったが、腹の奥には確かな熱が残っている。喧騒を背に、ホテルへの道をゆっくりと歩き出した。
| アクセス | 広島電鉄「本通」電停から徒歩約4分(283m) |
|---|---|
| 営業時間 | 17:00 – 00:00 (L.O. 23:00) |
| 定休日 | 日曜日(不定休あり) |
| 一人予算 | 5,000円〜5,999円 |