時間を持て余した夜
横川での打ち合わせが長引いた。時刻は20時半。
広島駅に戻って観光客の波に揉まれる気力は、もう残っていない。
今夜はここで、一人静かに飲んで帰りたい。
老舗の引力とカウンターの余白
横川駅から歩いて2分ほど。路地裏に、創業70年の老舗の佇まいを残す「太閤」の看板が光っていた。
引き戸を開けると、炭火の香りが鼻をくすぐる。
カウンターの端に、スーツ姿の男が一人、静かにグラスを傾けていた。
隣との間隔は十分にある。ゆったりとしたカウンター席だ。
一人客が座りやすい、この余白がありがたい。
一人飲み放題と、刺身の温度
メニューを見ると、おつまみは300円から800円と手頃だ。
驚いたことに、一人客でも「一人飲み放題」が頼めるらしい。
迷わず頼み、まずは「刺身盛り合わせ」をつまむ。
角の立った身が、皿の上で冷たく光っている。
醤油を弾く脂が、舌の上で静かに解けた。
酒が進む。
締めに「穴子めし」を追加した。
ふっくらとした穴子に甘辛いタレ。熱い米とともに胃の腑に落ちる。
炭火の爆ぜる音だけが、BGM代わりに響いていた。
静かな余韻
2時間。会計は3,500円。
表に出ると、夜風が少し冷たかった。
横川駅の改札まで、歩いてすぐだ。
来週も、ひとりでふらっと入れる店を探しに行きます。
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