[エキニシ]「炭焼壱」。新幹線までの1時間、炭火と串で出張の夜を静かに閉じる。

居酒屋

エキニシの路地裏。新幹線の時間を忘れるための場所

金曜20時。予定より早く会食が終わった。
広島駅の改札まで徒歩数分。新幹線の時間はまだ変更できる。
だが、このまま帰京するには、少しだけ夜が若すぎる。
駅の西側、エキニシの暗がりへ向かう。

炭火の匂いと、大人のための狭小空間

迷路のような路地を歩き、「炭焼壱」の前に立つ。
総席数25席。1階はコンパクトなカウンターのみで構成されている。
ガラス戸越しに中を覗く。
端の席に、スーツ姿の男が一人、静かにジョッキを傾けていた。
それで十分だ。重い扉を開けると、BGMより先に炭火の爆ぜる音が耳に届く。
大人のための空間。子供連れは不可だという。
煙草の煙と炭の香りが混ざり合う、心地よい喧騒がそこにあった。

一本200円の沈黙。串と向き合う時間

まずは「うずら」と「厚揚げ」を頼む。どちらも200円。
目の前の炭火で、少しずつ焦げ目がついていく。
その過程を眺めるだけで、ハイボールが一杯空いた。
運ばれてきた串は、余計な装飾がない。
厚揚げのカリッとした表面を噛むと、熱い豆腐の甘みが舌に広がる。

続けて「なす」と「しいたけ」を追加した。
しいたけのかさに溜まった出汁をこぼさないよう、静かに口に運ぶ。
炭の香りを纏った野性味が、次の酒を要求してくる。
派手さはない。だがこのシンプルさが、出張で疲れた夜には正しい。

3,000円。出張の夜の正しい閉じ方

1時間弱。会計は3,200円だった。
表に出ると、駅前のビル風が少し冷たかった。
新幹線のシートに身を沈めれば、あとは眠るだけだ。

来週も、ひとりでふらっと入れる店を探しに行きます。

筆者の独白:第1話 中年サラリーマンの魂の叫びはこちら
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