袋町のビル2階、静かなる酒の聖域。「きっすい」の白木カウンターで夜を閉じる

居酒屋

19時半。ホテルの硬いベッドで短い仮眠を取り、ネクタイを外して外へ出た。本通りのアーケードの喧騒を抜け、袋町へ。見上げなければ気づかない雑居ビルの2階。階段を上る足音が、少しだけ出張の疲れを軽くした。

階段の先の隠れ家。白木が迎える夜

扉を開けると、そこは別世界だった。BGMは控えめ。細長い店内の奥へと伸びるカウンターには、すでに先客が二人。それぞれが、自分の世界で静かにグラスを傾けている。カウンターの端、最も落ち着く席に通された。全席禁煙の空気は澄んでおり、磨かれた白木のカウンターが、手のひらの熱を静かに吸い込んでいく。ここでは、誰も他人に干渉しない。「一人ですか」という無用な気遣いもない。ただ、目の前の酒と料理に向き合うだけの時間が約束されている。

瀬戸内の魚と、冷えた地酒の重み

突き出しの端正な盛り付けを見た瞬間に、この店の誠実さがわかる。まずは刺身の盛り合わせを。瀬戸内で揚がった白身の弾力が、冷えた地酒の辛口と見事に調和する。大将の包丁さばきを眺めながら、ゆっくりと噛み締める。追加で頼んだ穴子の白焼きは、表面が香ばしく、中はふっくらと温かい。酒が、静かに、しかし確実に身体の奥へと沁み渡っていく。悪くない夜だ。

五千円台の納得。明日への余白

1時間半。6,200円。
六千円を少し超えた。出張の経費では落ちないが、自分のための夜にはこれくらいの重さがちょうどいい。札を置き、静かに店を出る。階段を降りて袋町の通りに出ると、夜風が火照った顔に心地よかった。来週も、ひとりで来ればいい。

アクセス 広島電鉄袋町電停から徒歩5分
営業時間 17:00 – 23:30 (L.O. 22:30)
定休日 日・祝日
一人予算 5,000円〜6,000円

筆者の独白:第1話 中年サラリーマンの魂の叫びはこちら
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