金曜、22時。
仕事が予想外に長引いた。
空腹というよりは、神経が昂って眠れそうにない。
流川のメインストリートを避け、細い路地を泳ぐように歩く。
深夜まで明かりを灯す、控えめな看板が見えた。
「のんびりな居酒屋 にじいろ」。
その名の通り、時間の流れがここだけ少し緩やかだ。
カウンター席の奥の方へ。
大将の「いらっしゃい」は、疲れた耳に心地よく響く、低く柔らかな声だった。
「和牛タンしゃぶ」を一人前。
丁寧に取られた出汁に、薄切りのタンを潜らせる。
余計な味付けはいらない。肉の甘みと、出汁の深み。
それを、広島の冷酒で迎え撃つ。
胃の腑が温まると同時に、肩の力がふっと抜けていく。
「ウニホーレン」。
広島の夜を象徴する一皿も、この静寂の中で食べれば、また違った味わいがある。
ウニの濃厚さと、ほうれん草のほろ苦さ。
独り占めするには、少しばかり贅沢な時間。
1時間。会計は五千円でお釣りが来る。
出張の余韻としては、これ以上ないコストパフォーマンスだ。
外に出ると、深夜の流川はまだ眠らない。
だが、自分の中の騒がしさは、もう消えていた。
ホテルまでの距離が、少しだけ短く感じられた。
来週も、ひとりでふらっと入れる店を探しに行きます。
| アクセス | 広電「胡町」電停より徒歩5分 |
|---|---|
| 営業時間 | 18:00〜翌3:00 |
| 定休日 | 不定休 |
| 一人予算 | 3,000円〜5,000円 |