[横川]「もり蔵」。名物の刺し盛りと、一人静かに日本酒を重ねる横川の夜。

居酒屋

仕事の難題を明日に残したまま、横川駅で途中下車した。賑やかな駅前の通りから少し外れた静かな一角に、控えめな暖簾を見つける。「もり蔵」。今夜は、ただ静かに旨い魚と酒で頭を空っぽにしたい。

凛とした6席のカウンターと澄んだ空気

引き戸を引くと、過剰な装飾を排した美しくクリーンな空間が広がっていた。数年前に現在の場所へ移転したという店内は、まだ新しく清々しい木肌の香りが漂っている。カウンターはわずか6席。奥には小上がりの座敷があるが、適度に距離が保たれており、他人の賑やかさは遠くの背景音として流れる。控えめなジャズの音色と、厨房で魚を引く静かな包丁の音。ここには、一人客を歓迎する静寂な余白が確かに用意されている。カウンターの隅に腰掛け、まずはサッポロの赤星を。冷えたグラスが手のひらに心地よい重さを伝えてきた。

名物の刺し盛りと雨後の月の完璧な調和

この店の真髄は、黒板に書かれた日替わりの品書きにある。まずは「刺し身の盛り合わせ(1,500円)」を。運ばれてきた一皿を見て、息を呑んだ。鯛、カンパチ、サワラ、タコが美しく端正に角を立てて盛られている。鯛に箸を伸ばし、醤油をわずかにつけて口に運ぶ。ねっとりとした甘みと、確かな弾力。サワラは皮目が軽く炙られ、脂の香ばしさが鼻に抜ける。地酒は「雨後の月(うごのつき)」を冷やで。凛とした綺麗な辛口が、魚の繊細な脂をさらりと洗い流してくれる。追加で頼んだ「茄子田楽(550円)」は、甘辛い味噌の香ばしさが五臓六腑に沁みた。

四千円台の納得感と、明日への静かな歩み

1時間半。ビールと日本酒を二合、刺し盛りと茄子田楽、そして最後に名物の鶏唐揚げを1個だけつまんで、お会計は4,600円。四千円台。この立地と味なら、賢い選択をしたと言える。五千円でお釣りが来る。出張の余韻としては、これ以上ない静寂だ。領収書は受け取らず、財布から札を出す。経費で落とす必要はない。これは自分のための夜だ。
店を出ると、夜の横川の乾いた空気が火照った身体を心地よく包み込んだ。重い革靴をアスファルトに響かせながら、ビジネスホテルへの道を歩く。少しだけ明日が軽くなっている。そんな静かな確信を抱いて、夜の底へ歩みを進めた。

アクセス 横川駅より徒歩2分(162m)
営業時間 18:00 – 00:00(24:00)
定休日 日曜日
一人予算 4,000円〜5,000円

筆者の独白:第1話 中年サラリーマンの魂の叫びはこちら
×