仕事を終え、ホテルに戻るにはまだ少し早い。深夜1時の流川は、欲望と疲労が入り混じっている。一人、その喧騒に紛れてしまいたい夜がある。
深夜の給油所、色紙の壁と広い鉄板
流川の入り口近く。ここは祭りの後、あるいは一日の戦いを終えたプロたちのための「給油所」だ。有名店ではあるが、深夜に訪れる客たちはどこまでも淡々としている。
壁を埋め尽くす色紙は、この店が積み重ねてきた時間の質量だ。だが、店員も客も、誰もそれを誇示することはない。広い鉄板カウンターの隅に腰を下ろしても、隣の客は自分のコテ捌きに集中している。この「無関心」こそが、深夜の独り客には最高のスパイスになる。
すじ煮込みと、迷いのないそば肉玉
まずは「すじ煮込み」を頼む。自家製ポン酢が効いたさっぱりとした味わいが、一日の重荷を軽くしてくれる。ホロホロに煮込まれた筋は、ビールとの相性が抜群だ。
メインは迷わず「そば肉玉」。目の前の大きな鉄板で、キャパシティを活かした流れるような手捌きが展開される。キャパが大きいからこそ、一人客も風景の一部として溶け込める。出来上がった一枚は、ソースの甘みが優しく、水分を飛ばした麺の食感が心地いい。王道だが、深夜の胃袋にはこの「変わらない味」が正解だ。
誰も俺を見ていない。それでいい。
深夜2時を過ぎると、店内にはカープ中継の代わりに深夜番組の音が静かに流れている。コテで切り分ける音だけが、深夜のBGMだ。
誰も俺を見ていない。誰も俺を気に留めない。その孤独な自由を噛みしめながら、最後の一片を口に運ぶ。
三千円。会計を済ませて店を出ると、流川の街はさらに深く、騒がしく、そして優しくなっていた。重たくなった足取りでホテルへ向かう。給油は完了した。
| アクセス | 胡町電停から徒歩5分 |
|---|---|
| 営業時間 | 11:00~翌3:00 |
| 定休日 | 無休 |
| 一人予算 | 2,000円〜4,000円 |