ホテルの部屋で明日の資料の最終確認を終えると、時計の針は19時を回っていた。
張り詰めていた緊張の糸が、ふっと緩む。
このままベッドに倒れ込むには、夜はまだ少し早い。
旨い魚と、少しの冷酒。ただそれだけを胃の腑に収めたい。
喧騒を避け、静かに杯を傾けられる場所を求めて、的場町方面へと足を向けた。
トロ箱が迎える静かな二階席
稲荷町の電停から徒歩2分ほど。
目当ての店『うおはん』は、路地に静かに灯りをこぼしていた。
暖簾をくぐると、案内されたのは落ち着いた二階席。
一階の賑わいとは少し距離を置いた、一人客にはありがたい静寂がある。
席に着くと、店員がその日仕入れたばかりの魚が並ぶトロ箱を抱えてやってきた。
氷の上に横たわる魚たちの目は澄み、張りがある。魚屋直営の矜持が、言葉よりも先に伝わってきた。
コチの煮付けと刺身の升盛。魚屋直営の底力
まずは「刺身の升盛(980円)」。
升から溢れんばかりに盛られたサワラや鯛は、角がピンと立ち、口に含めば跳ね返すような弾力がある。
冷酒を含み、舌に残る脂を洗い流す。
続いて運ばれてきたのは、本日の逸品「コチの煮付け(880円)」。
まさかの姿煮だ。
箸を入れると、ホロリと崩れる純白の身。
甘辛い煮汁がしっかりと染み込んでいるのに、コチ本来の淡白な旨味は少しも損なわれていない。
アンコウの竜田揚げも気になったが、今夜はこの煮付けとじっくり向き合おう。
あら汁の温もりと、四千円台の納得
締めは「あら汁」を頼んだ。
予想よりも大きなお椀で運ばれてきたそれは、魚介の出汁が複雑に絡み合い、胃の底からじんわりと温めてくれる。
「四千円台。この立地と味なら、賢い選択をしたと言える。」
財布から札を出しながら、心の中でそう独白する。
魚屋直営という看板に偽りなし。
静かな夜と確かな味の余韻を抱え、夜風が心地よい路地へと歩き出した。
| アクセス | 広電「稲荷町」電停より徒歩2分 |
|---|---|
| 営業時間 | 17:00〜23:00 |
| 定休日 | 日曜日 |
| 一人予算 | 3,000円〜4,500円 |