ホテルにチェックインし、ネクタイを緩める。
シャワーを浴びて一日分の汗と疲労を洗い流すと、ようやく自分だけの時間が訪れた。
時計は19時半を回っている。
会食はない。誰かに気を遣う必要もない夜だ。
ただ、静かに酒を飲み、手作りの温かさに触れたい。
胡町の交差点を抜け、雑居ビルを見上げる。
目指すのは4階。小さな隠れ家、「おばんざいBar うさぎ」だ。
ビルの4階、9席だけの静かな逃れ場所
エレベーターを降り、看板を確かめて扉を開ける。
そこにあるのは、カウンター9席のみの小ぢんまりとした空間だ。
繁華街の喧騒は、この階まで届かない。
BGMの音量も控えめで、先客も静かにグラスを傾けている。
店主の丁寧な所作がカウンター越しに見え、店全体が穏やかな空気に包まれていた。
出張の夜、一人でこの空間に身を置けることの贅沢さを噛み締める。
まずはビールを。喉の奥に冷たい液体を流し込み、ため息を一つ吐き出した。
手作りおばんざいと地酒の確かな温度
メニューを見渡すと、丁寧に作られた家庭的な料理が並んでいる。
「おばんざい盛り合わせ」をもらう。
出汁がしっかり染みた大根、ほうれん草のお浸し、そして肉じゃが。
派手さはない。だが、それがいい。
一口食べるごとに、手作りの温かさが胃の腑に落ちていく。
外食続きの出張者にとって、この優しさは何よりの馳走だ。
合わせるのは広島の地酒。すっきりとした辛口の「雨後の月」を選ぶ。
出汁の旨味と日本酒のキレが、口の中で見事な調和を見せる。
ただ黙々と、箸を進め、杯を干す。
誰とも喋らなくていい。目の前の皿とグラスだけに集中する時間が、たまらなく心地よかった。
四千円台。出張の余韻を満たす良心的な代償
時計を見れば、すっかり長居をしてしまった。
会計を頼む。四千円台。
この立地、この静寂、そして手作りの温もりを独占してこの値段なら、賢い選択をしたと言える。
ごちそうさまと告げて店を出る。
エレベーターで地上へ降りると、再び胡町の賑やかさが押し寄せてきた。
だが、今の私にはそれが少しも嫌ではなかった。
腹の底には確かな温もりがあり、微かなアルコールが心地よい眠りを約束してくれている。
明日の仕事も、悪くない一日になりそうだ。
| アクセス | 胡町駅より徒歩1分(広島県広島市中区胡町3-24 ムシカビル 4F) |
|---|---|
| 営業時間 | 19:00 – 00:00 |
| 定休日 | 月曜・日曜 |
| 一人予算 | 4,000〜4,999円 |