鉄板和食 小池商店[袋町・中町]。ビルの最奥、L字カウンターで鉄板と対峙する

居酒屋

20時。袋町公園の喧騒を横目に、目的のビルへと足を進める。看板は出ているが、店の姿は見えない。ハイネス国泰。その建物の入り口からさらに奥へ。突き当たりにあるその扉こそが、今夜の目的地だ。

「いらっしゃい」
店主の短い挨拶が、無駄のない空間に響く。L字のカウンター。わずか6席の特等席が、独りの男を静かに迎え入れる。

鉄板の熱気が、心地よく頬を撫でる。
まずはビールを。グラスの冷たさが、今日一日の緊張を解いていく。
この店は「鉄板和食」を掲げる。お好み焼きのような賑やかさではなく、一品一品、鉄板の上で「料理」として仕上げる。

まずは「牛すじ煮込み」。
鉄板の上で温め直されるそれは、トロトロに溶けた脂が濃厚な出汁と絡み合い、酒を呼ぶ。
続いて、出し巻き卵。店主の鮮やかなコテ捌き。鉄板の上で巻かれていく卵は、まるで生き物のようにしなやかだ。
箸を入れると、中から出汁が溢れ出す。シンプルだが、誤魔化しの効かない味。

メインには、地穴子の鉄板焼きを。
皮目はパリッと、身は驚くほどふっくらと。
余計な装飾はいらない。塩とわさびだけで、穴子の持つ力強さと向き合う。

カウンター越しに、店主が黙々と鉄板を磨き、次の客の準備をする。
常連の話し声も、ここでは低く抑えられている。
ビルの奥まった場所という「物理的な距離」が、そのまま日常からの「精神的な距離」になっている。

1時間半。5,600円。
会計を済ませ、ビルの暗い通路を戻る。
表に出ると、袋町の夜風が少しだけ優しく感じられた。
誰にも教えたくない、だが誰かに誇りたい。そんな夜の聖域が、ここにはある。

アクセス 広電「袋町駅」から徒歩4分(ハイネス国泰1F奥)
営業時間 17:00 – 00:00
定休日 月曜日
一人予算 ¥5,000~¥5,999


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